そらになるこころ

緊縛師 青山夏樹のSMや緊縛に関する思いを綴るブログ。内容重めです。

事の顛末

この業界では昔からあることなのでわざわざ事のいきさつを

外部の人の目に触れる場所に書くことは止めておこうと思っていましたが

妙なメールをよこしたり、煩わしいことを目にしない為にも1度ことの顛末を書くことにしました。


SMクラブ「ピンクスナイパー」は(私が名付けた女王様名で書きますが)朱雀紗生嬢がプロの女王様に

なりたいという事から彼女の為に作ったクラブでした。


ちょうど(これも私が付けた名前で書きますが)白井虎が弟子として勉強することになった頃と重なったので

勉強の為、若い2人でクラブをやらせてみるのも良いなという考えもありました。

「やりたい」と言う言葉を聞くことは多々あるので、本気かどうか自分達で準備をさせることにしました。

思い返せば去年の秋、その準備の為に警察署で行われる風俗営業管理者講習を一緒に受ける所から

準備は始まりました。

白井も朱雀、2人とも私が縛りの基礎を教える教室に通って来ていましたから

安全への知識を教えつつそれぞれにじっくり準備をしていこうと話していました。

そうするうち、冬になり2人から付き合うことになったと報告がありました。

想像していなかったので一瞬戸惑いました。

何故なら(この時点でお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが)

アダルト業界で同じ組織内で商品となる女性と従業員の男性が付き合う事はそもそもタブーで

あったりしますが、それは恋愛の部分で仕事に影響が出てしまう為で、私もそれを心配しました。

ですが、身内として面倒を見ると決めた2人が付き合い一緒に暮らし始めたと言うのを事後報告で聞き

人情として解消しろとは言えませんでした。

SMは愛情表現の世界だから愛し合うことで、SMの勉強にしてくれればという思いから

苦い言葉を飲み込みました。

とにかく、仲良くやってくれと祈る気持ちでした。

そして去年の秋から白井を現場へ連れて行くようになったのですが、

数回連れて行った時点で難しさを感じました。

細かい部分は面倒なので書きませんが、色々な場面での言動を見て彼が私の弟子として

やっていけるかどうか疑問を持ち始めました。

疑問を感じた時に「試用期間としてやらせてみたけど弟子としては価値観が違うので無理だ」と

切っておけば良かったのかもしれません。

優しさと言えば聞こえが良いですが、私の甘さが招いた事と言えばそれまではあります。

私が研究し実践するSM及び緊縛はとても精神的な世界を重視しているので、

弟子として技を伝えるには心の部分が問われます。

心と言うと分かりづらいかもしれませんが簡単に言うと価値観が違うなら私の弟子として

私の縛りを受け継ぐことは難しいということです。

しかしもう少し長い目で良い所を見つけたいと言う気持ちから、

弟子としての仕事を続けるかどうかを見守ることに決め教室の手伝いを任せ鍵を渡しました。

1人のプロとして厳しい業界でやって行く為のノウハウを細かく教える上で、

弟子という関係上他人に言うより厳しい基準を求めました。

緊張感や教えを受ける師匠への敬意が薄れていけば、こちらも面倒を見る理由がなくなります。

そういう面で白井の方は面倒を見る理由を失っていきました。

気付いたことを注意しても本人は一向にその言葉の意味を理解しませんでしたから、

真意が伝わらない以上私にはどうすることも出来ません。

私の流派での緊縛師は、縛る方法より相手の心・相手の痛みを自分の痛みのように感じる部分が

最も重要な部分だと考えているので 私の思いや周りの人の気持ちに鈍感というのは、

指導することが本当に難しいと感じます。

それに対して女王様はプロになるにはまず技術です。

緊縛師と女王様、同じSMのプロでも進む道は別なので指導もそれぞれ別の方法で進めていました。

仕事もプライベート一緒になった2人にはどこかの関係がダメになれば全部ダメになるから気を付けて

という事は何度も言ったものでした。

娘と歳が近い彼女の方は特に、東京のお母さんだと思って何でも相談してと言って主人共々

家族のように考えていました。

沢山の質問に答え、相談に乗り、食事に連れて行くのは身内だと思うから当たり前にしていましたが

考えてみれば

衣装をどこで買うか教え、
コルセットは高価なので仕事を覚えるまでは買うのが大変だろうと新しいコルセットをあげ、
手ぶらでプレイに行けるよう店で道具を用意し
店としてグッズの卸問屋で仕入れをするのに連れて行こうかという話をすれば、
早く見たいから卸問屋に行きたいからと「一人で行っては入れますかね?」のメッセージが来た時には
流石に驚いたものでした。

こういう言葉尻に違和感を覚えた時点で難しかったのでしょうが。

レーニングに必要なものが無いのを見てウエアやシューズ、ギアなどやり

プレイに早く行きたいと言えば練習台を探し、

女王様業はもうやらないと決めていた自分の中の決めごとも破り彼女にプレイを教える為現役復帰をしました。

デートコースでお客さんを取りたいというのでデートコースの申し込みの文言を早く作り、

プレイではないので1人で予約を取ればいいというと「不安なので最初はWにしてください」と。

このように勝手だと感じることも多々ありましたが

とにかく、乗りかかった船だから彼女の為に出来る事はしてやろうと

お金を使い時間を作り出来る事はやりました。

しかしクラブオープンから1週間。

教室の手伝いに対して白井の態度を叱ると、私の言わんとすることを理解しようともしない言動を

LINEで送って来ました。それも教室のグループLINEに。

呆れて言葉を失っていると

次は彼女からLINEが。

私と白井がぶつかるのを見るのが辛い、彼が好きで一緒に居たい。結婚します。

そういう内容のLINEのメッセージが届きました。

それにどう返事するのか言うべき言葉も見つかりませんでしたが、

とりあえず2人に預けていた事務所の鍵を返送するよう送り先住所を教えました。

常識的な考え方のある社会人であれば、LINEが仕事上の正式な意思表示とは考えないでしょう。

その幼稚なメッセージに返信する理由もありません。

その後、鍵は届きましたがそこには仕事に関してどうするという趣旨の手紙もなく

それきり教室にも顔を出すことはありませんでした。

夜の世界、アダルト業界では特に雇い主に挨拶も連絡もなく居なくなる、

いわゆる「飛ぶ」ということは良くあるもの。

つまり「飛んだ」という認識です。

不義理をし、後ろ足で泥を掛けるようなことをする人間だと思わず

小さな問題に片目をつぶってきたことが招いたのかもしれません。

人を見る目が無かったと言いますか。

そして、通常店からつけてもらった名前を「飛んだ」人間が使い続けるということもあり得ません。

業界のルールを知らないにしても、人として心無いことばかりが続き開いた口が塞がらないという状態です。

細かいことを書けばキリがありませんが(区切りをつける為顛末を1度だけ書いていますが)

これ以上親子ほど年の離れた子たちに目を吊り上げてああだこうだ、本気でやり合う気もありません。

これ以上おかしなことを言うのであれば逆にキチンと訴えてもらった方が助かります。

彼女たちが希望して進めて来たことに対して尽力した私が被った損害は少なくありませんから。


ただ、一度「半年は女王様として現役復帰をする」と言葉にした以上、

復帰を喜んでくれたMのことも考え(勿論クラブ立ち上げに使ったお金もありますし)尻ぬぐいをしつつ

半年は現役プレイヤーとしてプレイはします。

先生が女王様をやめて緊縛師をされているのを曲げて自分のために現役復帰してくれることを感謝しています。と言ってくれた言葉が思い出されて胸が痛みます。

SMという世界は「心」を扱う世界であり、

ビジネスとしては性風俗のサービスを提供する世界。

そこでプロとして他の人よりも頭一つ二つ飛びぬけた存在になろうとすることは

とても厳しいことが沢山待ち受けている道を進む事でもあります。

私の中のSMは人を傷つけることより、人の痛みを感じる能力が必要だと考えています。

そして、性欲に関わる秘めた欲望・ファンタジーの世界であり

その性の奥深い世界は自分自身が深淵に触れなければ、

様々な性癖を抱えた人たちの心を解放してあげられる存在にはなれないと思っています。

綺麗事ではなく、性にまみれ欲にまみれ苦しみ痛みぬいて愛し合う 汚くて美しい世界です。


それらすべてを考え、良かれと思ってして来たアドバイスやサポートは無駄になりましたが、

自分の中のSMに対する思いや情熱は変わることはありません。

また

新しい人たちの道を開きたいという思いがなければ一生クラブプレイに復帰することは無かったと思うので、

私に会う機会を待っていてくれ喜んでくれるM男ちゃんたちに多く会える機会を得て、

自分の原点に触れ励みを得る事が出来ていることは、怪我の功名といいましょうか喜ぶべきことです。


今回の件は偏に私のぬるさが招いたことだと思います。

妙な甘えや特別意識を持たせてしまったことは今後の人生に於いて勉強になりました。

今後、誰かを責任もって面倒みたり技術を後世に伝えようという気持ちはもうありませんが

私は今までと変わらず自分の信じるSMを続けて行こうと思います。

そしてこれを機に、緊縛師という肩書にこだわってきたことからも自分を解放し

ライフスタイルミストレスであり緊縛師であるという

自分だけの生き方を楽しんで行くつもりです。

時間もなく一気に書いたので文章が読みづらい部分もあったかもしれませんが

最後までお付き合い下さりありがとうございました。

2017. 6/6 青山夏樹