そらになるこころ

緊縛師 青山夏樹のSMや緊縛に関する思いを綴るブログ。内容重めです。

2022年 1/30 「F」 閉会のご挨拶

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本日は困難な状況にも関わらず沢山の方にお越し頂き本当にありがとうございました。

イベント開催を決めてから日増しに厳しくなる状況にイベントの中止も悩みました。
今日集まって下さった皆さんにとっても、このイベントに参加することは覚悟が必要だったことと思います。

私たち緊縛師は、
信じて身体を預けて縄を受けてくれるモデルさんが居なくては表現できません。
そして観て下さる皆さんがいなければイベントをすることも出来ません。
改めて、心からの感謝を二人のモデルとご来場くださった皆さんにお伝えしたいと思います。
本当にありがとうございます。

今回はセックスワーカーとして、SMショーとして最後の舞台になりました。

このスタジオで17年の間、多くの作品を撮影して来ました。
一本鞭と言うとても思い入れの強い作品もそうです。
そんなSMの為の場所で、セックスワーカーとして最後のSMショーをさせて頂きました。
このスタジオでショーをやるのはこれが最後です。

けれど
緊縛ショー自体は何かの形で一生続けていくつもりです。

日本人が古来より神と人を繋ぐ依り代として大切にしてきた、心を繋ぐ力を持つ大麻縄を使って人と人の心の対話を表現するものとして緊縛ショーを形にしていきたいと思っています。

緊縛=エロという先入観からどうやって切り離していくかはこれからの課題です。

 

日本人が大切にして来た一人一人の命に対して敬意を払う事、
人を壊すことを知る上で人を守ることも研究してきたこと、
その考えが生きているのが逮捕術である捕縄術です。
私は色事師としての縛りには興味がありません。

人を守り心にこべりついた負の感情を克服する為の挑戦をサポートする緊縛を、一つの道として形にしていきたいと思っています。

 

私の敬愛する能楽の大家である世阿弥は様々なものを花と表現しました。
ある時は生き方。
ある時は人を花と言いました。
芸を花と言いました。
人の心の真実も花と言いました。
その言葉は私の人生を貫く軸になっています。
それを踏まえて、私の吊りの形は全て花の名前を付けています。

縄を受けてくれる人が花として咲いて欲しい。
自分自身が価値ある花だと知って欲しい。
そんな思いからです。

辛いことから逃げず厳しい吊りを受けているその瞬間、自分に自信がなかった受け手は自分も気づかぬうち立派な花を咲かせています。

小さな花、地味な花、華やかな花、大きな花、色んな花があります。
花はそれだけで素晴らしいのだと思います。
色とりどりの、それぞれの花(人生)を自由に自信を持って思い切り咲かせて欲しいです。
野辺に生きる花のように強く健気に、可憐に生きていくことはきっと出来ると信じています。
心に花を持ち続けるなら。

縄を受ける人たちが緊縛を通して自分自身が花であると感じてもらえれば幸せです。

そしてその花が開く様子を観て下さる方の中にも
小さな種が落ち変化への芽吹きに繋がれば幸せです。

これからも、苦しみを抱えて生きている方が求めてくれる時はその方たちが自分と向き合って自分を赦して受け入れていくお手伝いが出来たらと思っています。

誰が見てもエロだとは言わせない表現を完成させていきます。
どうか見守ってやってください。

そしてもう1つ。

私自身、約30年セックスワーカーとして社会の影の世界に生きてきました。
そこは社会的信用もなく社会的地位も低く差別の中で生きる世界でした。
性を換金する世界には華やかに見える部分の裏に悲惨な影の部分があります。

人に買われることを選択したことに伴う地獄が待っている恐ろしい世界でもあります。

その暗い泥沼の中で正気を保つことすら難しく、
自尊心や優しさや未来への希望もすり減らし悲惨な結末へ向かう様子を沢山見てきました。

SMは自分の性癖ですが、それを売り物にすることは心をすり減らすことでもあります。

この世界に一度足を踏み入れると、欲望と情念に満ちた泥沼から抜け出すことはとても困難です。
昔の遊郭の足抜けが難しかったように今でも
綺麗な形で、良い部分だけ得て適当な時に日向の世界に戻ろうということはとても困難です。辞めては戻り辞めては戻りを繰り返すうちに歳をとり他で潰しの効かない歳になり商品価値が下がり続けるまま性を換金する世界にしがみつく事しかできない人は多いのが現実です。

私自身セックスワーカーを辞めることが難しく長い年月が掛かりました。
20代で離婚し経済的理由で娘と引き離され、無一文で一人になり、娘を取り戻す為に人生を建て直そうとしました。
一度ドロップアウトした人間には過酷な現実しか待っていませんでした。

私にはSMしかなかった。

セックスワーカーとして働くしかないけれど、後に子供が私の仕事を知って自分を恥じるような親にならないように仕事を選びました。稼げず食うに困るような時も絶対に裸にならず身体を売らず踏ん張りました。やるならとことん極めてSMでてっぺんを取ってやろうと必死にやって来ました。
職業に貴賎なしを実践する思いで。
それから20年経って娘たちにも私の仕事を知ってもらい、誇らしく思ってもらえる程とことんやり抜いたと思っています。

だけど、一生このままではいけないと思っていました。
娘の人生、私の姿を追いかけてくれる後輩の為、慕って支えてくれたMの為にも。

一度足を踏み入れたアダルト業界を抜けることは、とても難しいです。

ですから今回背水の陣を敷く覚悟で、不退転の決意で前に進もうと区切りを付けました。

誰かの心の拠り所として、人生をサポートする並走者でありたい。
今までは性の世界だけでしか出来ませんでしたが、セックスワーカーを引退した後は
年齢性別社会的地位などの壁を取り払って
必要として下さる方が心を解放できる安全基地を作って行きたいと思います。

これからはお日様の下、表の世界で闘っていきます。

性を換金する世界で長期的な未来を見失っている方たちが、勇気を持って
希望を持って未来を描いてみたいと思えるような
お日様の下に戻る道を照らす灯りを灯していけたらと思います。

そんな挑戦を見ていて下さい。

いつかどこかで、何かの形で、またお会いしましょう。

今日は本当にありがとうございました!