そらになるこころ

緊縛師 青山夏樹のSMや緊縛に関する思いを綴るブログ。内容重めです。

リビングデッドの撮影

自分の中で大きな一区切りがついて、
やっと頭をリセットできたので


書こうとしてためらっていたことを書きます。


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去年の8月か9月のことです。

一通のメールが届きました。

ある制作会社からのお仕事の依頼のメールでした。MV制作にあたって、私に縛るシーンの安全面や縛り方を考慮して相談をしたいとのことでした。

以前にもMVのお仕事の話をもらったことがありましたが
途中で話が変わったり、企画自体がなくなることがあったので
あまり乗り気ではありませんでした。

多分ファッション緊縛の人と予定が合わなくて他を探して私なんだろうし
お断りしようと思いつつ返信をしました。

ちょうどその時、撮影とデラカブのショーが続いている時期で
打合せの時間を作れなかったので
デラカブまで来てもらえるならとお伝えしました。

すると、デラカブ終演時間の23時頃に制作担当者の方と監督が
歌舞伎町まで来てくださいました。
誠意を感じる対応に警戒心がとけるのを感じました。

早速打ち合わせに入ると、
頂いた書類にイメージやコンセプトなどがしっかり書かれていました。

緊縛を持ってこようという企画の場合、色物扱いをされることが多いので
警戒しながら慎重にお話を伺っていると

「amazarashiというアーティストのMV」だと言われました。

そこで、
誰かのかわりだとしてもこれはやりたいと思いました。

ずっと聴いていた音楽だから、世界観なら掴めるはず。
「この撮影を安全に進めたい」
との一言で引き受けることを決めました。

私にできる事があるなら、
本当に意味のある仕事をしたい。

 

それから
撮影用のイメージスケッチ、
全体のイメージをCGで作った試作ビデオなど資料が届き
実際のスタジオを見て縛りと吊りの安全なプランを打合せました。

場の作りこみにどうしても必要ということで1日入り

スタンドインでイメージが欲しいとのことで1日

私の仕事の空いた時間に現地に行き大勢の方が作業する中、吊り上がりのイメージなどを練っていきました。

結果、撮影日以外に3、4日スタジオにいたでしょうか。

AVでは基本撮影は1日、長くて2日。
事前の作りこみも当日の朝早く行うので、面白い感覚でした。


丁度去年最後の大会に向けた減量末期で、フラフラしながら早朝から1日みなさんと作業したのは
特別な思い出になりました。


そして、撮影当日。

完成図はバリケードテープしか見えませんが吊り上げたベースは麻縄で縛ってシステムは全て麻縄で完成させています。

モデルさんを垂直に吊り上げ、
固定し、縄は極端に減らした上で
縄を1mmも見せない吊りです。

麻縄の意味はあるのか?


と思われる方がいるかもしれませんが

安全な固定の為には、


柔軟で天然繊維の中で最強の強度を持つ


麻縄でシステムを作る必要がありました。

緩まず揺れず締めすぎず。

これは麻縄だから出来ることであり、


緊縛師の腕の見せ所でもありました。

途中モデルさんが不安で


何度も過呼吸を起こしたり


起こしかけたりしましたが

多くの拷問の現場を知る人間を


一人置いておいてもらうことで

不安を減らし、


パニックを起こさせないケアができます。

私の考える緊縛師は、


過酷な状況における心と体の専門家です。

そういう意味で、


本物の専門家を呼んでもらえたことは金額以上の価値があったと自負しています。


モデルさんの体、秋田さんを縛る時
アダルトか一般の表現かの垣根など消えたように感じました。


次のブログでは
その日の想いを、家に帰ってからメモした日記のようなものを投稿してみます。