そらになるこころ

緊縛師 青山夏樹のSMや緊縛に関する思いを綴るブログ。内容重めです。

弟子を持つこと。

私の考えを言葉にして欲しいとのご意見を頂きましたので、1度私の考えを書いてみようと思います。

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私の仕事は緊縛師です。

緊縛師になる前はいわゆる「女王様」で、それは今でも変わりません。

21歳でSMクラブに入り今年で50歳になりますが、ずっとSMを生業にしアダルト業界で生きて来ました。

 

アダルト業界で生きると言うのはとても厳しいもので、人一倍警戒心も強く自分の大事にしているものを守る為にも人との距離をソーシャルディスタンス並にとりながらここまで来ました。

 

私は残り少ない現役で活動出来る時間の中で、どうしてもやらねばと使命感のように思っている事があります。

それは後進の育成です。

人の痛み、自分の痛みがわからない人が多くなっていく中でSMは痛みを与える世界。愛のない人に刃物を渡すようなSMは、生きる意味も目的を持たなかった若い頃の私を救ってくれたSMという世界の輝きを曇らせることです。

私が経験し体得して来た私なりのSMを次の世代にバトンとして渡すことが、私の成すべき仕事だと考えています。

 

人の痛みを感じるSM。

日常を支える心の杖になるSM。

 

そのために今まで何人も女王様、緊縛師へと指導して来ました。

これは自分の心を砕いて分け与えるような、骨の折れる活動です。それでも大切にしていきたいと思っています。

 

そんな思いを大切にしてもらえず、弟子をやめてもらったことも沢山あります。

その都度、もう教えるのは止めようと思うのですが使命感は胸の中で燻り続け次の情熱に出会うとまた炎が上がります。

 

今、有難いことに再び情熱に触れて

縛りを真剣に覚えようとしてくれる若い世代の人達と仕事をしています。

 

私が「次にこれをしなさい」と教えるのは簡単ですが本当の意味での自分の技術にするには自発的な熱意が必要です。

 

私が弟子入りしていた当時の師匠も、緊縛講習は一切してくれませんでした。手弁当でついて行ける仕事に同行し仕事を手伝いながら師匠の縛りや動きを見ることが勉強でした。(よく言う盗んで覚えろというものです)初めは師匠の動きを全てコピー出来るほど、とにかく見ました。

すると「あ、今の縄使いはこういう理由かな?」と気づく時が来ます。そこで師匠に「あれはこういう理由ですか?」と聞くと「よくわかったな。じゃあこれを教えてやろう」と1つテクニックを教えてくれます。ひたすら道具の片付けをして師匠を信じてついていく中で、少しずつ縄が自分の体の1部になっていくのです。

そんな下積みが何年か続き、手伝いながら覚えた仕事は緊縛だけではなくビデオの仕事を1人で全てこなせる程になりました。

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※当時の写真

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(兄弟子とスタンドインもよくやりました)
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技術が身についていく過程で師匠は私のためになる人脈は繋いでくれました。(弟子入りすると言うことは、独り立ちの準備もさせてもらえることだと思います)この技術で、私は生きて行けている言っても良いです。

 

私も新しい人に教えるのは少な少なで、細かく厳しいです。一生食っていける技術は財産だから、簡単に渡して「後はよろしく」とは行きません。

一緒に温めながら手渡し、自分のものにして行かなくては育たない卵のようなもの。

 

私もいちいち師匠に質問し食い下がり大喧嘩しながらも諦めなかったから今があります。その過程の大切さを人一倍感じています。

 

先日、あるお店のオーナーの方とお話しした時

その仕事に向いていないと思った人でも、細かく何でも聞いてくれてアドバイスを求める人は向いているように思った人よりも大きく伸びるというお話しを聞きました。

深く頷きました。

私の仕事も、自信がなくて向いていないと思っている子の方が何でも聞いてくれてアドバイスを求めるのでコツコツ繰り返すうちに実力がつき仕事が上手く進むようになります。

純粋な心で、SMへの情熱を持ち続けてくれる人ほど必ず技術を自分のものに出来ますし長年応援してくれるファンが出来ます。

 

私は起伏の多い情熱のうねりよりも、継続する静かな情熱を大切にしたいと思います。

その情熱に全力で応えて、私の苦しみ哀しみ悦び全てがこもった縄を未来に持って行って欲しいのです。その為に、私も先頭に立って表現し続けます。